無痛分娩について
wakimoto clinic
当院では平成4年から無痛分娩に対応しております。
当院の分娩の半分以上は無痛分娩です。
無痛分娩という言葉は英語のlabor analgesiaという単語が起源ですが、正しくは和痛分娩(麻酔分娩)で陣痛の50~90%位のカットを目指します。
完全に無痛にしてしまうと分娩の進行が期待できません。
ただ、無痛分娩という言葉が汎用されていますので、当院では無痛分娩も和痛分娩と同義で扱います。
硬膜外麻酔は、脊髄から出る神経の周囲に薬液を投与して、神経の機能を一時的に弱める局所麻酔の一種です。
脳と脊髄は、くも膜(くもの巣のような薄い和紙のような膜)と硬膜(厚くてしっかりとした膜)におおわれています。
くも膜の内側は、無色透明の液で満たされています。硬膜外麻酔は硬膜の外側(硬膜外腔)に薬を入れます。
薬液が硬膜外から浸透していき、痛みが和らいでいきます。
無痛分娩の安全対策
平成29年には無痛分娩による死亡事故のニュースが大きな社会問題となりましたが、死亡事故の主な原因として硬膜の外に入っていなければならないチューブが硬膜とくも膜を突き破っていたことが考えられます。
実際、意図的にくも膜下に麻酔薬を入れることはあります。帝王切開の麻酔がその代表です。
ただし、くも膜下に麻酔薬を入れるときは2.5ml前後しか使用しません。硬膜外麻酔で同じ効果を得ようとすると15~20ml位の麻酔薬が必要となります。
硬膜外と思っていたところに誤ってくも膜下に15~20ml入ってしまえばどうなるでしょうか。たった2.5mlでおなかを切っても全然痛くなくなるところです。
そこに大量の麻酔薬が入れば、麻酔レベル(麻酔は足の方から頭に向かって効いていきます)はどんどん頭の方に上がっていきます。首まで上がれば呼吸ができなくなります。頭まで上がれば意識を消失します。
ただ、帝王切開後数時間で麻酔の効果が切れるように、麻酔レベルが上がっても麻酔が切れるまで呼吸のアシストをすれば再び呼吸もできますし、意識も戻ります。
重大事故になったケースは、①誤ってくも膜下に大量の麻酔薬が入ってしまった結果、呼吸が停止した、②呼吸が停止したときに呼吸のアシストが適切にされなかった、に尽きると思います。
対策として推奨されるのは、誤ってくも膜下に薬が入らないように、まずチューブを留置するときに十分に確認をします。
そして、とにかく小分けにして麻酔薬を入れていきます。3ml入ったところで、「先生、足が動きません。」となれば、薬がくも膜下に入ったことを疑いチューブを抜いてしまいます。
ほとんどのケースはこれだけで対応可能ですが、万が一、呼吸ができなくなるほど麻酔薬が入ってしまったら、気管挿管を含めた呼吸管理をします。
当院で無痛分娩を実施するのは、麻酔のトレーニングを受けた麻酔科標榜医資格を持つ産婦人科専門医です
われわれは硬膜外チューブを入れて、内診をして分娩の進行をみながら、麻酔薬を何度も確認して入れて、赤ちゃんが無事に生まれるまで責任を持って麻酔及び分娩を管理します。
医師不在で看護師や助産師が麻酔薬を注入することは絶対にありません。
平成29年には悪者のように扱われた無痛分娩ですが、悪いのはそれを管理する医師であったり、管理体制であって、無痛分娩そのものが悪いのでありません。
医療がこれだけ発達した世の中で、痛みがこれだけ放置されているのは陣痛以外はないそうです。
無痛分娩で不安なことがあれば、なんでもご相談下さい。
■無痛分娩:原則計画分娩
(38週~40週の間に出産日を決めて、誘発分娩を行います。)
■通常の分娩費用+麻酔費用 75,000円 (経産婦) / 150,000円 (初産婦)